ジャズアーティスト、コートニー・パイン来日時のインタビュー記事
東京・コットンクラブ 2015年1月16日(金)
1月中旬、コットンクラブでの来日公演のため東京を訪れていた、英国を代表するジャズアーティスト、コートニー・パイン氏(以下:CP)に、英国政府観光局(以下:VB)が話を聞いた。
Q.1 – VBでは最近、日本人を対象に、英国でもっとも訪れたい場所や体験したいことについてアンケート調査を行いました。その結果、バッキンガム宮殿、湖水地方、エディンバラ城が訪れたい観光地として挙げられたほか、本場のアフタヌーンティーの体験や、シャードから眺めるロンドン市街などにも人気が集まっていました。
そこで、コートニーさんが日本人旅行者に勧めたい場所についても、お聞かせ願えますか?
©Kiyoshi Sakasaki
CP(満面の笑顔で):生粋のロンドンっ子としては、来客にはやはりロンドンを案内することが多いね。つい最近も、豊かな歴史を誇るロンドン塔でライブ演奏をしたんだ。しかし今はやはり、サウスバンクのテート・モダンやその周辺が大のお気に入りさ。例えばライブ音楽からシェイクスピア・グローブ座、大道芸人、そして威厳あるバーやレストランに至るまで、新たな芸術が次々に生まれている。そしてロンドンの定番でもあるセントポール大聖堂など、伝統の顔もすぐ近くにある。
Q.2英国内の好きな場所と、その理由は?
CP: 仕事柄、ツアーなどで全英を巡ることの多い私だが、中でもブライトンやブリストルは「クール」という言葉に尽きるね。一見の価値はあるよ。いずれも、ロンドンからも行きやすいし、アートや音楽、食など、いつ行っても、常に新しい何かが生み出され、表現されていることを実感するだろう。
↓ブリストルではバンクシーによる作品も街中で見ることが出来る
Q.3 英国観光に最適な時期と、その理由は?
CP: 迷わず、8月下旬の「ノッティング・ヒル・カーニバル(TheNotting Hill Carnival)」に合わせて来ることを勧めるよ。日本だけでなく、世界中の友人たちにも、いつも言ってるんだ。多彩なイベントが同時多発的に開催され、まさに娯楽とエネルギーに満ち溢れている。子供の頃から、このカーニバルを見て育った私だが、今でも必ず行くんだ。多くの日本人がきっと、心から楽しんでくれると思う。
Q.4 英国の食事は、日本では評判の悪いものの代表格と定義されることがあります。そうした誤解を解くために、どんなレストランを紹介しますか?
CP: (室内に響き渡る大きな笑い声):実は私も、好物はジャマイカ料理なんだ!イーリングに「タートルベイ(TurtleBay)」という、とびきりのジャマイカ料理店があって、うまいカリブ海料理を出すよ。消化にもいいしね。イーリングといえば日本人駐在員が多く居住しているよね。そうした駐在員をひとりでも友人に持っていて、イーリングを訪ねてくるようなことがあれば、ぜひ「タートルベイ」をお勧めするよ。
Q.5 英国流夜遊びの真髄を味わいたい日本人へ、アドバイスは?
CP: サウス・ロンドンのストリータムにある、「ハイダウェイ・クラブ(Hideaway Club)」では、よく演奏している。暖かな共同体意識があるし、観客は常にエネルギーに満ちているからね。まさに夜遊びに格好の場だし、ミュージシャンにとっても素晴らしい会場だよ。ここのクラブには、「コートニー・パイン」というカクテルまであるくらいさ!
Q.6 コートニーさんの音楽からは、多彩な文化的影響が感じられます。多文化都市としてのロンドンが、その土台にあると思いますか?
CP: それは間違いない。特に私がまた若かった1980年代には、非常に多くの影響を受けた。「ザ・スペシャルズ」のようなスカバンドのほか、ソウルボーイやニューウェーブ、レゲエにも触れたし、ロンドンでは常に、新しい流れがあちこちでひっきりなしに湧き出していた。例えばウォーダーストリートの「ワグ・クラブ(Wag Club)」は、ジャズの中心的な場所のひとつだったな。その後、アメリカに移住する機会もあったが、私はロンドンに留まることを選んだ。ロンドンには音楽の自由があるし、だからこそ高い創造性が育まれるんだ。
Q.7 インスピレーションとなっている日本の音楽アーティストはいますか?
CP: おのぜ・まこと氏はヒーロー的な存在であり、インスピレーションの源泉だね。まもなくツアーを予定しているんじゃなかったかな。もうひとりのインスピレーションは、渡辺貞夫氏。かつてふらっと、私のライブに立ち寄ってくれたことがあったんだ。自分の目を疑ったよ。まさに崇拝の対象さ。それから最近、黒田卓也氏に出会ったが、彼の作品は素晴らしいよ。そして、東京スカパラダイスオーケストラのメンバーたちにも出会う機会があって、エネルギーに満ちあふれたライブに圧倒された。
Q.8日本と英国との間に、なんらかの共通点はあると思いますか?
CP: 主な共通点としては、いずれも島国であり、そのことに由来する固有の文化が形成されてきたということだろう。ただし日本は世界のどんなところよりも特徴的で、とても独特だね。日本に来るのが毎回すごく楽しみだよ。文化はもちろん、食べ物や人が特別なんだ。
Q.9 コートニーさんの音楽に、特にインスピレーションとなっている「英国的な」もの(例えばクラブやサブカルチャー)があれば、教えてください。
CP: さっきも言ったように、ロンドンはとても創造的な街であり、この創造性は刺激となっている。常に新しい音楽作品に触れられることで、自らの音楽をより一層高めることができている。期待の新人アーティストもたくさん出てきてる。中でもザラ・マクファーレン(Zara McFarlane、注:VBでは2013年初頭、ザラ氏にもインタビューしています)は最近、MOBOアワードを受賞してるよね。
Q.10 2015年の計画は?
CP: そうだな、まずはちょうど、新アルバムのアートワークを最終調整している段階なんだけど、私にとっては初めてとなるデュエット・アルバムになっているんだ。正直に言って、今までしてきたことの中で一番難しかった。すごい強烈なプロセスだよ。いつものバンドメンバーとは、ひとりずつ演奏するから、ソロの延長と言うことができるが、2人だけで演奏するとなると、全く違うプロセスになるよね。このアルバムを引っさげて、まずはサウサンプトンから、英国ツアーを予定してる。だから結構緊張してるよ。(VBではコットンクラブで行われたコートニー氏のライブを鑑賞、高いエネルギーを感じ取りました。そして会場を埋め尽くした人々は、バンドメンバー全員とまさに一体となっており、それだけにコートニー氏の言う2人だけのステージによる空気感の相違について、想像できました。)
コートニー氏の最新アルバム「House of Legends」は、アマゾンから入手可能です。
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