あけましておめでとうございます。
牧歌ブリ吉です。
本年も宜しくお願い致します。
ブリ吉とロンドンを散歩すると、100m進むのに3時間掛かる。と、かつて訪英した友人にSNSで書き込まれたことがあります。
確かに、歴史的にも、都市工学的にも、犯罪史上的にもそれだけ内容の詰まった通りもあるのですが、ロンドンはそんな通りばかりではござんせん。ブリ吉の解説は簡単明瞭を心掛けておりますので、100m進むのに説明に掛かる時間は、掛かってもせいぜい30分でしょう。って、まだ長いか。
ともあれ、ロンドンを散歩するテーマはいくらでもあると言いたいのです。今日はロンドンの未(不)使用地下鉄駅を辿る散歩のヒントをご紹介しましょう。
(シティとウエストエンドの境にあるストランド駅はたまに復活しますが、現在は利用されていない地下鉄駅です。)
今でこそ、清潔で安全な地下鉄ですが、1980年代と言えば、剥き出しの鋼鉄製のセグメントとセグメントとのつなぎ目から、錆びた地下水が垂れ落ちては、プラットフォームに立つ乗客のコートを汚してしまうような状態でした。
(地中深く掘り下げるシールド工法で掘られたトンネルの内側は、セグメントと呼ばれる鋼鉄のタイルを、アーチ構造の理論に基づいて円形に貼り付けることで、頑丈な円柱を象ります。かつての地下鉄は駅構内でも、この画像のように鉄鋼が剥き出しになったまま、つなぎ目から錆びた地下水が落下していたのです)
(現代のセグメント。ロンドンの地下鉄のセグメントは半永久的に使えると言われている鉄鋼で出来ていますが、50年ほど前からは原材料を節約するため、鉄筋コンクリートで出来ています。日本でも丸いトンネルの地下鉄に乗るときに注意して見ると、壁がこれらのセグメントで覆われています。ご参考まで)
ロンドンの地下鉄は20年ほど前から、剥き出しのセグメントの上に明るい色の化粧版を貼り、地下鉄駅構内は一気に明るさを取り戻しました。あ、いえいえ、元々暗いので、取り戻してはいないですね。ただ、単に少し明るくなりました。失礼しました。
(1912年頃のシールド工法による地下抗工事の様子。大きな空き缶を横にしてその中に居る人間が掘り進み、前進する度に周囲にセグメントを貼り付けてトンネルの形を造っていきます)
(因みに、現代のシールドマシーン。日本は世界の最先端技術を維持して30年以上を経ています)
地下鉄は電気水道ガスなどのライフラインを邪魔しないように考案されたものですから、古い鉄道でもけっこう地中深いところまで潜っていく必要があります。深い坑道だけにその特性を活かして、第二次大戦中はロンドン市民の避難する防空壕に使われることもありました。
(ロンドン市民は防空壕として地下鉄駅を利用し、ドイツ軍の空襲に備えました)
この構内の安全性に目を付けたチャーチル首相下の第二次大戦時の戦時内閣は、メイフェアにあった不使用地下鉄駅ダウン・ストリート駅の構内を内閣の防空壕として、さらに内閣がミーティングできる部屋と、内閣大臣たちが執務できる部屋を用意したのです。
戦時中の内閣はダウニング・ストリートが空襲を受ける可能性を避けるために、英国外務省の地下に置かれた臨時内閣室を頻繁に使っていましたので、閣議の場所として第三のチョイスとなるダウン・ストリート駅が使われることはなかったとのことです。
このダウン・ストリート駅はグリーン・パーク駅とハイド・パーク駅との間あり、その駅間が近すぎるという理由で閉鎖されただけに、戦後も駅としての使用が再開されることはありませんでした。現在では、内閣執務室だったところは変電所として利用され、駅の入り口はニューズ・エージェントと言われるコンビニになっています。
この赤銅色のタイルが地下鉄の目印です。
ロンドンの街を歩いていると、意外なところでこのタイル張りの建物を見つけます。
戦前の地下鉄駅の入り口のすべてで、この丈夫なタイルを使用していました。
因みに、メイフェアとは、北東にオクスフォード・サーカス、南東にピカデリー・サーカス、北西にマーブル・アーチ、南西にハイドパーク・コーナーの4つの地点に囲まれた「世界の富の集結地」と呼ばれる地域で、南側はピカデリー通りとグリーン・パークに面しています。宝石や高級骨董など値段の付けられないような多くの奢侈品が集まり、イギリスを拠点とする多くの有名人がセカンドハウスを持っていたり、どこかの国のスルタンが酒池肉林のパーティをしたり、…と超高級ホテルの林立する地域でもあります。
未使用地下鉄駅の散歩はお金が掛からないけど、ロンドンを徒歩や自転車でゆっくり楽しむには、打ってつけのテーマになると思います。
ダウン・ストリート以外の「使用されていない地下鉄駅」の情報は以下のウェブでどうぞ。
(ピカデリー線のAldwich駅も長らく使われていませんが、この赤いタイルが地下鉄駅の目印になります)
牧歌ブリ吉
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