今回は英国の犬の話です。イギリスにおける犬を取り巻く事情は、日本のそれとは随分違います。
これはオーヴィスという犬関連グッズの通信販売カタログ。
めでたくカバーボーイに選ばれ表紙を飾っているのは、ゴールデン・レトリバーのタッカー君。私が英国で飼っていたレトリバーのララちゃんも、水に入ることとテニスボールが大好きでした。
ロンドンで出会った他のレトリバーの飼い主も「うちの子もいつも濡れていて、いつも泥々なのよ」と言っていました。ララちゃんも泥んこになって遊んでいる時が一番幸せそうだったので、日本で泥んこ遊びなどしたこともない、いつも洗い立てのように清々しいレトリバーたちに出会う度に、ちょっと複雑な気持ちになります。
英国では飼い主が犬を置いて家を空ける際、犬をケージに閉じ込めてしまうケネル(ペットホテル)ではなく、個人のお宅で家族同様に犬を預かってくれるドッグ・ボーディングや、家に泊まり込み、普段通り犬と生活してくれるドッグシッターが一般的。これは「あなたはホリデーをケージで過ごしたいですか?」と書かれた、ドッグシッターが検索できるサイトの広告。
動物愛護国家の英国では、介護犬や盲導犬でなくても、犬は電車、バス、地下鉄といった公共交通機関に飼い主と一緒に無料で乗車できるんです。
ヨーロッパの他の国では大型犬は乗れなかったりするのですが、英国では許可されています。英国の犬は旅慣れていて、皆、車内でおとなしくしています。
洋服を着せて一緒に連れ歩くアクセサリーのような日本の犬と違い、防寒・防雨以外の目的で犬に服を着せている人は英国には殆どいません。
こちらはウォーキングが好きなイギリス人のために、犬と一緒に行けるカントリーサイドのパブやウォーキングコースなどを紹介した本の数々。
英国では子犬や子猫をペットショップで販売するのは彼らの健康な発育には好ましくないという理由で、原則、ペットショップにはいません。
特定の犬種が欲しい人はケンネルクラブなどを通してブリーダーを探し、子犬が手に入るまで辛抱強く待ちます。健全なブリーダーは子犬が少なくとも生後8週間になるまでは引き渡しません。その間、母犬のお乳を飲み、兄弟姉妹と遊ぶことで、子犬の基礎体力や情緒が安定します。
ブリーダーから直接貰い受けることで、子犬と一緒に親犬にも会うことができ、ブリーダーから様々な情報やアドバイスを得ることもできます。
英国では、行き場や身寄りのない犬たちが保護されているシェルターから犬を引き取ることも一般的。
日本にはペットを一時的または終生預かってくれるアニマル・シェルターが殆どありませんが、英国には1,000団体以上もあります。これは俳優のジョージ・クルーニーが妻でレバノン系イギリス人のアマルと、アメリカ・ロサンゼルスのシェルターから、4歳のバセット・ハウンド系雑種の犬(クルーニーが抱えている)を引き取ったという記事。
英国でも、シェルターで飼い犬を見つけたことを誇りにしている人にたくさん出会いました。日本でもそんな風になればいいなと、心から願います。
こちらは英国最大の犬のチャリティ、ドッグズ・トラストのセンターで、英国全土に21ヶ所あるうちの1つ。
ドッグズ・トラストの収入は年間およそ120億円(現在のレートで)もありますが、その半分以上が個人や企業からの寄付金。ドッグズ・トラストを通して、年間1万匹以上の犬が新しい家族と巡り合っています。
ドッグズ・トラストの有名なスローガンが、A dog is for life, not just for Christmas.(犬との付き合いは一生もの。クリスマス・プレゼントのためだけではありません)。
We never put a healthy dog to sleep.(私たちは健康な犬を決して安楽死させません)というのも知られています。
センターにはカフェやショップもあり、家族で週末、ちょっと犬を見に来たついでに、お茶を飲んで帰ることもできます。
たくさんの人がセンターを訪れていました。
センターの受付の中にも犬たちがいました。この子たちはスタッフの飼い犬かしら。
「なぜドッグズ・トラストの犬は信用できるのか。獣医が健康診断し、行動を観察している。不妊・去勢手術済み、または手術用バウチャー提供。ワクチン接種済み。4週間の保険無料。マイクロチップ埋込み済みで、迷子になっても見つけられる。私たちがあなた(ライフスタイルなど)に相応しい犬を選びますし、いつでもご相談に乗ります」
ドッグズ・トラストは犬の基礎知識や犬を迎え入れる心構えなど、すぐに役立つ無料パンフレットも多種・多数配布しています。
センター内部。右側が犬舎。左側は犬がエクササイズすることもできる中庭。
犬舎はこのような感じ。ブランケットやおもちゃもたくさん与えられています。犬によっては、この子のように「あまりじろじろ見られると、私は不安になります」という張り紙までしてあります。
「ミス・ピギーはイングリッシュ・ブルドッグとスタフォードシャー・テリアのミックス。正真正銘のイギリス犬です!」
小さなベッド(人間の赤ちゃん用かな?)の毛布の上ですやすや眠るミス・ピギー。
自分の体の数十倍の大きさのぬいぐるみと見つめ合う子。
前出の2匹、スノーウィーとビスケットの性別、年齢、性格、好きなもの、苦手なもの、センターに来てからの様子など、犬を引き取りたいと思っている人にとって、できるだけ多くの有用な情報が提供されています。
ドッグズ・トラストのセンターにあったポスターから。「殆どの犬は自分が人間みたいとは思っていない。そうではなくて、自分が人間(と同じ)だと知っている」
日本では年間19万頭の犬猫が自治体の保護施設に収容され、13万頭が殺処分されています。このうち猫が10万頭以上ですが、自治体以外での業者や個人による隠れた処分も含むと、この数字を遥かに超えるかもしれません。
こうした犬猫を救うため、私は日本にもドッグズ・トラストのような専門的知識と経験が確立されたチャリティができないだろうかと考え、この夏、彼らに連絡を取りました。すると、もう既に日本のNPOと連携し、一緒にワークショップなどを行なっていると教えられました。そのNPOというのが関西を拠点とするアーク(アニマルレフュージ関西)だったのです。
2012年、彼女は日本での長年の動物愛護活動への貢献が認められ、エリザベス女王よりMBE(Member of British Empire)を受勲しました。海外の動物保護活動に尽力する個人を称えて励ます英国は、なんと素晴らしい国なのでしょうか。アークはRSPCA(英国王立動物虐待防止協会)認定の日本初の会員でもあります。
アークは動物愛護先進国イギリスとドッグズ・トラストの基準・方法に則り、動物の保護・里親探しを行なっています。関西・能勢のアークの犬舎棟にはおよそ300頭の犬猫たちが収容されています。
私も毎月1回、能勢で犬たちの散歩といったボランティアをしていますが、アークの犬はどの子もきれいで、健康も管理されています。
ここは2014年に兵庫県篠山にオープンしたアークの新犬舎棟がある敷地。ドッグズ・トラストの寄付及び協力も得て、英国の専門家が設計したものです。
アーク篠山の新犬舎棟。入口の横にドッグズ・トラストのロゴも貼ってあります。
アーク篠山の犬舎内部。お気づきになりましたか? ドッグズ・トラストのセンターみたいでしょう? 犬も年をとると体温調節が難しくなるのですが、こんな寒い山の中でも、ここなら床暖房もあるので安心です。
この子はスズちゃん。望みもしない妊娠をさせられ、狭いケージにずっと閉じ込められていた母犬が、ストレスからまだ生まれたばかりの彼女の足を噛みちぎってしまったのだとか。今もびっこを引いているものの、優しい人間のお母さんに巡り会い、幸せになったスズちゃん。見てください、この笑顔! スズちゃん、良かったね。
ドッグズ・トラストの心温まる最新コマーシャル
イギリスの首相に学ぶ-反論の伝え方-信夫-梨花/dp/4074019922
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