「ここに換気口を作らなきゃならないんだけど、最適の場所が観光名所でもある広場のど真ん中なんだ。機能を追及すれば、格好悪くて景観を損ねるし、恰好を気にすれば、デザインを技術者だけではデザインに乏しい」
最近のロンドンの街中では普通に見られる斬新なデザインが彼のアイディから生まれています。
【St Paul大聖堂近くのBishops Courtの真ん中に設置された換気口は、お洒落なオブジェに見えても本来要求された機能もちゃんと果たしています】
先日もちょいと紹介した「新」二階建てバス、ルートマスターも彼のデザインです。
【英国を代表するふたつのアイコン。赤ポストもいろいろな変化を経ていますが、バスに至っては2011年に廃止されたベンディ(2台連結バス)からルートマスターのカタチに戻るなんざ、粋ってもんじゃござんせんか】
【新ルートマスターの降車用後ドアは内開きであるために、降客がドアに近づき過ぎて、ドアが開かない。あるいは、降車を急ぐ客に触れたドアが再び閉まってしまうので、乗降に時間が掛かり過ぎる。という難点が指摘されています】
彼の作品の特徴は、斬新でありながら、実用性を伴った構造物であること。大学でデザインを学んだだけではなく、鉄鋼やプラスチックなどの素材も研究し、且つ建築やエンジニアリングにも通じているという背景の持ち主です。
【2010年上海のUKパヴィリオンで披露された「種の城」。未来のために現存する植物種子を保管しています。リオ五輪の開会式でもデモンストレーションされた未来への遺産をロッドの中に収めています】
【数々の種子が入ったロッド。段ボール箱に詰められたままの展示というところに最前線のデザインとのギャップを感じて親しみが湧きます】
ブリ吉の友人にも成功しているデザイナーが少なからず居ますが、彼らの共通点はエモーショナル・インテリジェンス(この場合は「社会的知性」)の高さです。
【2012年ロンドン五輪のOlympics Cauldron(聖火台)もHeatherwickの作品です。Cauldronとは魔法使いのお婆さんが薬や煮物を作るときに使う大釜という意味でも使います】
総じて人付き合いも上手ですし、人の意見や知識や見識に対して謙虚で、且つ自信を内側に秘めている人が多いように思えます。
また、デザインと言ってもモノの形だけではなく、目に見えない空間や時間までを考慮して、生活そのものをデザインすることになって既に30年ほど経っているのですね。
【未来のロンドンもデザインしています。このCGを観て、17世紀ごろ、一大ショッピングアーケードであったロンドンブリッジを連想しました。この新しい橋の位置はブラックフライヤーズ橋とwaterloo橋との間にある南北の公園2つを結ぶように造られると思われます】
デザインの意味が広がり過ぎて、ちょいと分けが判らなくなりつつありますが、それだけ物事のソリューションが多様化し、且つ受け容れられる土壌が整って来たとも言えます。
最近のロンドンには、彼の作品があちこちに見られます。古い建物の中やすぐ傍にあるのに、絶妙にマッチングしていて違和感は無いし、ちゃんと機能も果たしていることも判ります。 是非傍に行ってじっくりとご覧ください。
もちろん、Heatherwickのデザインはロンドン以外の諸外国にもたくさんありますので、詳しくはこのウェブで。展示会も世界各国で多数開催中です。
この記事を読み終えたら、まず検索エンジンにThomas Heatherwick workと入力して画像検索してみてください。皆さまの身に覚えのある彼のデザインへと導かれます。
以上、ブリ吉でした。